食事療法
食事療法
精神症状に対する食事療法についてまとめます。薬物療法や心理療法・カウンセリングでなかなか改善したいケースもあり日々困っておりましたが、その中で食生活そのものが非常に乱れているケースが多いことがわかりました。適宜診察の中で食生活など確認することにしておりますが説明しきれないものも多く、ここに詳細を記載させて頂きます。
多くは「脳の不調を治す食べ方(KADOKAWA社)」という書籍から引用してまとめたものです。
また栄養素をとることとは逆ですが、カロリー制限が記憶力や作動記憶の向上に役立つとされており適度なダイエット・減量が認知症やADHDの症状改善に有効かもしれません。
またコロナの後遺症で一躍有名になった「ブレインフォグ(脳霧)」という病態があり原因不明とされておりますが、脳の過剰な炎症が関係しているといわれております。うまく考えることができない、集中やマルチタスクができない、短期・長期の記憶が思い出せないなどの症状が認められます。初期のアルツハイマー型認知症で時にブレインフォグの体験をすることがあります。また自閉スペクトラム症、慢性疲労症候群、線維筋痛症などの病態でも同様の体験がたびたび認められます。抗うつ剤などの薬物治療ではなかなか奏功しないため、抗炎症のサプリを中心に内服を勧めたりもしております。
最後にここで取り上げた脳によい栄養素についても、取り過ぎは害になる可能性があります。何事もバランスが大事なのでご注意下さい。
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栄養素 | うつ | 不安症 | PTSD | ADHD | 認知症 | 強迫 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
腸内細菌 | プロバイオティクス | 〇 | 〇 | ||||
プレバイオティックス | 〇 | 〇 | |||||
炭水化物 | 高GI炭水化物 | × | × | × | × | × | |
低GI炭水化物 | 〇 | ||||||
人工甘味料 | × | × | |||||
脂肪 | 悪い脂肪(ω9など) | × | × | × | × | ||
良い脂肪(ω3) | 〇 | 〇 | |||||
タンパク質 | グルテン | △ | △ | △ | △ | ||
カゼイン | × | ||||||
アミノ酸 | グルタミン | × | × | ||||
グリシン | 〇 | ||||||
トリプトファン | 〇 | ||||||
ビタミン | B1・B6 | 〇 | 〇 | ||||
B9・B12 | 〇 | 〇 | |||||
C・E | 〇 | 〇 | |||||
D | |||||||
ミネラル | Fe | 〇 | 〇 | ||||
Mg | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
亜鉛 | 〇 | 〇 | |||||
抗酸化物質 | ポリフェノール | 〇 | |||||
Nアセチルシステイン | 〇 | ||||||
嗜好品 | カフェイン | × | 〇 | 〇 | |||
アルコール | △ | △ | |||||
その他 | ウコン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
硝酸塩・添加物 | × | × | |||||
イチョウ葉 | 〇 | 〇 | 〇 |
腸内細菌
昨今、腸内細菌と様々な疾患(糖尿病、高血圧、肥満、アレルギー、自己免疫疾患)の関係が研究されております。精神疾患においてもうつ病、不安症など様々な疾患と腸内細菌の組成の関連が注目されております。腸脳相関といって腸の健康と脳の健康には深いつながりがあるといわれております。
明日大事な用事があって不安が強くなると下痢したりすることや、緊張が強い状態が続くと便秘が続いたりといったことが例としてあげられます。腸内細菌の状態を健康に保つことが、脳の健康を保つのに重要と考えられます。
腸内細菌の組成についてはヨーグルトや食物線維をとることでもなかなか変わらないともいわれておりますが、薬物療法で行き詰った方やもともと民間の健康法に興味がある方は、腸活を実践することは特に害もないため有意義であると考えます。
今回は腸活における重要なもの、プロバイオティクス(probiotics)とプレバイオティクス(prebiotics)についてまとめます。プロバイオティクスとは、人体によい影響を与える微生物またはそれらを含む製品のことで腸内細菌製剤や発酵食品が例としてあげられます。またプレバイオティクスとは微生物の成長または活動を誘発する製品のことで食物繊維やオリゴ糖などがそれに含まれます。これらを組み合わせて摂取することで有効な腸活につながります。
以下に主に近所の薬局やスーパーで取り扱っている製品についてまとめます。値段についてはアマゾンで一番安かったものを記載しております。またクリニックで処方可能なものについては処方可能と記載しております。
プロバイオティクス:腸内細菌製剤と発酵食品のこと
腸内細菌製剤
エビオス:ビール酵母菌
1800円(2000錠)
ワカモト:アスペルギルス・オリゼーNK菌、乳酸菌、ビール酵母菌
1800円(1000錠)
ビオナット:納豆菌、乳酸菌
1700円(400錠)
ビオスリー:糖化菌、酪酸菌、乳酸菌
3000円(270錠)処方可能
ミヤリサン:酪酸菌
5500円(1000錠)処方可能
新ビオフェルミンS:乳酸菌
3000円(540錠)処方可能
ラクトビオS:乳酸菌
1600円(560錠)
発酵食品
味噌、醤油、漬物、納豆、ヨーグルト、チーズなど
プレバイオティックス
オリゴ糖
オリゴのおかげ850円(500g)
食物繊維
サツマイモ、玄米、キノコ、海藻、野菜
その他
豆類、オーツ麦、バナナ、ベリー、玉ねぎ
炭水化物
高GI炭水化物:脳に悪い
精白パン、白米、ジャガイモ、パスタ、砂糖など。過剰な糖質が脳内の炎症を促すといわれている。砂糖は心拍数と血糖を上げ過活動を起こす。徐波睡眠とレム睡眠を妨害し良質の睡眠も妨げる。
低GI炭水化物:脳に良い
炭水化物がよりゆっくりとグルコースに変換されるもの。全粒粉のパン、玄米、オートミール、春雨など。血糖の上昇がゆっくりであり脳には優しい。
人工甘味料:脳に非常に悪い
アスパルテームは脳内ホルモン(ドパミン・ノルアドレナリン・セロトニン)の合成と分泌を抑制する。酸化(さび)を起こす。スクラロースは腸内細菌の組成を悪化させる。人工甘味料はダイエット食の中で多様されているが精神症状を悪化させる可能性が高いので注意が必要。
脂肪
悪い脂肪
飽和脂肪酸(バター)、揚げ物(ω9などの植物油)、トランス脂肪(マーガリン)など。セロトニンの減少や肥満を介して腸内細菌の組成を悪化させ精神症状を悪化させる。徐波睡眠とレム睡眠を妨害し良質の睡眠も妨げる。
良い油
ω3の油でEPA・DHAの供給源となるものが脳に良い。種類としては魚油、アマニ油、シソ油など。脳の炎症をおさえるといわれる。
タンパク質・アミノ酸
グルテン
グルテン(gluten)とは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質が絡み合ってできたもの。腸内環境を悪化させることで、特にグルテン過敏やセリアック病の方で様々な精神症状を誘発。
カゼイン
乳製品に多い。ADHDを悪化させる。特にA1カゼインが悪い。
グルタミン酸
アミノ酸の中の一つ。うま味物質でありさまざまな食品に含まれている。神経興奮物質であるため、とりすぎると不安やPTSDを悪化。
トリプトファン
セロトニン(幸せホルモン)の前駆体であり、日中は脳内でセロトニンに変化し、夜になると睡眠を促すメラトニンに変化する。そのため、トリプトファンが不足すると、不眠症や不安症、鬱を引き起こす原因となる。
ビタミン
ビタミンB1(チアミン)・ビタミンB6(ピリドキシン)
気分の調節にかかわる神経伝達物質の産生に関与している。
B1はアルコールで減少するためアルコールによる精神症状では補充が必要になることあり。
ビタミンB9(葉酸)・ビタミンB12
葉酸不足で海馬領域の脳細胞の損失(海馬萎縮)を引き起こす。
またセロトニンの合成に関与。
ビタミンC・ビタミンE
代表的な抗酸化物質。
神経伝達物質の合成の調節に関与している。
ビタミンD
神経ステロイドの一種で脳細胞の保護。細胞の炎症や毒による破壊をおさえる作用あり。日光浴により生成される。
ミネラル
Fe
ニューロンを保護する組織を構成し、気分に関与する化学物質の合成と化学経路を制御する。
Mg
不安・うつに関与。脳内の有害なストレス性化学物質の濃度を下げる。
亜鉛
多動に関与。脳の炎症をおさえる。亜鉛が足りないとドパミンに依存する報酬系の活性が低下し多動をもたらす。
抗酸化物質
ポリフェノール
脳の酸化ストレスを軽減する。ADHDの症状を緩和する。
Nアセチルシステイン(NAC)
皮質、扁桃体、海馬、線条体などの強迫性障害と関連する数多くの脳領域で、細胞間のグルタミン酸塩の放出を阻害する。抜毛症、爪かみ症、皮膚むしり症などに有効。
嗜好品
カフェイン
1日400㎎以下が望ましい。脅威を処理する脳領域を刺激するため不安・恐怖を誘発。不注意症状や記憶に良い影響あり。やる気、覚醒、警戒心、効率、集中力、認知能力を高める作用があるが、過剰になると興奮作用あり。トリゴネリン(血管機能改善成分)入りのものが望ましい。トリゴネリンは神経細胞を活性化させて、新たな情報伝達の回路を作ることができるので、結果的に認知症や脳の老化に効果的であるといわれております。
アルコール
脳細胞を破壊することでうつを引き起こし認知症を早める、自殺誘発する、睡眠で途中覚醒を促し不眠症になるなどいいことはあまりない。少量のアルコールであれば、抗不安、リラックス効果が認められるが、量としては1日1単位以下×週4日以下が望ましい。
*アルコール単位換算表
アルコール1単位=純アルコール20g
日本酒(アルコール度数15)1合(180ml)
ビール(アルコール度数5)500ml(中びん1本)
焼酎(アルコール度数25)0.6合(110ml)
ウイスキー(アルコール度数43)ダブル1杯(60ml)
ワイン(アルコール度数14)1/4本(180ml)
缶チューハイ(アルコール度数5)1.5缶(520ml)
ストロングゼロ(アルコール度数9)280ml
その他
ターメリック(ウコン)
不安やうつに有効。有効成分はクルクミンといわれ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンの代謝に影響を与えるといわれている。ウコンはカレー粉に入っており、カレーを沢山食べると鬱の予防になるかもしれません。
硝酸塩(添加物・保存料)
ベーコン、ソーセージなどの加工肉で使用。腸内細菌に作用し不安や鬱を悪化させる可能性があり注意が必要。
イチョウ葉
フリーラジカルよる攻撃から細胞を守る。不安、鬱、PTSDの症状を緩和するといわれている。
meiQua(メイキュア)EPA1000
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