診療案内

解離性障害について

精神科で扱う奇妙な疾患に解離性障害といったものがあります。記憶が一時的になくなってしまう健忘、気付いたら違う場所にいるといった遁走などといった奇妙な現象のことをさします。基本的には自分のこころを守るための防衛装置として働いていると思っていいと思います。特に虐待を受けたトラウマ体験のある方で合併することが多いですが、女性で元々ぼんやりしやすい人もこの障害になりやすい傾向にあります。またドラえもんの「いやなことヒューズ」という道具があるのですが、その漫画の内容がこの解離性障害にまさに一致します。

解離性障害について01
解離性障害について02

以下に具体的な症状をまとめていきます。

解離性健忘:最近の出来事の記憶喪失であり、自分の生活に関する記憶の喪失のこと。トラウマ的あるいはストレス性の出来事に関連するといわれます。

解離性遁走:健忘に加えて、家庭や職場を離れて旅をすること。ただしその期間の行動は奇妙ではない。例えば切符を買って東京から大阪に行ってたこ焼きを食べてホテルに泊まるような行動まで可能である。ただし本人にその間の記憶はないのです。

離人感:自分の感覚・経験が自分でないような、よそよそしい、失われているような感覚。情緒の喪失といった体験。

現実感喪失:人々および周囲全体が非現実的で、よそよそしく、人工的で色彩がなく生気がないように感じること。何かベールが被って現実感がないような状態のこと。

解離性障害について03

体外離脱体験:何らかの原因で自己意識(見ている自己)が自分の身体から離脱して、上から自分の身体や周囲.の事象を見下ろすという現象。ドッペルンガー現象(自己像幻視:自分の姿をみる)というものがありますがそれも体外離脱体験の一種と思われます。

解離性障害について04

気配過敏:後ろに誰かいると感じる感覚です。実際は自分の魂というか生霊という存在を感じています。

多重人格:おのおの独立した記憶、行動、好みをもった人格が複数存在すること。一つの人格から他の人格への変化は突然起こる。トラウマ体験と関連するといわれております。治療は難渋することが多いですが、自我状態療法といった心理療法が有効な場合があります。

転換性障害(運動・感覚の解離):解離性障害の兄弟のようなものです。急に腕が動かなくなる、けいれんを起こす、声がでなくなる、耳が聞こえなくなるといったもので運動または感覚が通常から解離する状態をさします。辛い状況や不快な葛藤から逃れるため、他人に依存するためといった心理的背景があります。

嫌なことヒューズの漫画の内容にもありますが、解離の症状は自身のこころや脳を守るための安全装置として働いている面があるのです。解離の症状が頻繁に出現する方は、安全装置を必要以上に使っているかもしれないです。逆に無理やり症状を取り除くと生きづらさが悪化することもあるので難しいところです。

生きていく中で様々なストレスや耐え難い出来事に遭遇したときに、他者の助けや広い視野や理性・知性を使って対応し安全装置を使わなくて済めば、解離の症状は改善すると思います。しかし、癖のようになっている方も多いので難しいですね。

さらに多重人格の方には自我状態療法という心理療法があります。自分はこの療法はやりませんが、変性意識状態の中でこころの中の様々な人格の話を繰り返し聞き続けることで人格の統合を図る心理療法のひとつです。