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当院での精神療法の特徴②~病名・治療法の共有と病識について

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 開院して数か月になりますが、ひとつ興味深かったのが自身の病気を知らないまま通院を続けている方が多いことです。「よくわからないけど薬をもらっている」「何となく通院しているけど治らない」のような感じです。一般的な内科疾患の診療ではあまりみられない現象かと思います。全部とはいいませんが、内科疾患では高血圧、糖尿病、脂質異常症など病名をほとんどの患者様は知っており、病気の治療方法・経過なども大まかに把握していることが多いです。

 心療内科クリニックでは患者さんに診断名は伝えない、あるいは共有しないといったことが度々あります。他院に通院していた方に「前の病院ではどのように診断されていましたか?」ときいても「さあ~?」という方も多いです。実際伝えられたとしてもうまく共有できていない場合もあります。病名を伝えないことでのメリットも確かにありますが、当院では可能な限り伝えること・共有することとしております。診断がよくわからない場合は「分からない」とも話します。病名を共有するメリットとしては、病気としてターゲットが分かりやすく目にみえてくるため、対処しやすいことがあります。どんな治療もそうですが、こちらが一方的に薬を出したり指導したりしても病気特に精神疾患自体はよくならないことが多く、共同作業にした方がうまく行くことが多いです。患者さんの生活習慣が大事になる糖尿病などと同じですね。病名や治療方法を共有するとネット社会なので皆様ネットで検索して色々と調べてきます。ネット情報には様々なものがあり玉石混交となっておりますが、それはそれでいいかなとも思います。ある意見を絶対視することが一番好ましくなく、当院での治療方針を含めて様々な意見から自分で治療方針を取捨選択していくことが大切だと考えます。

 また心療内科でよく使用することばに「病識」というものがあります。要は自分がどんな病気にかかっていてどんな治療をしているかちゃんと理解している、認識していることです。心療内科ではそもそもこの病識を得ることが難しい傾向にあります。脳という病気の場所そのもので考えるので自分が病気であると理解するのは難しいからです。認知症の方が自分で認知症だとわからないといった例や、うつの人がうつ状態なのに「まだまだ自分は大丈夫」だと考える例などがあります。足が捻挫すると腫れたり痛かったりするので確かに病気だとわかりますね。しかし脳の場合は故障した脳そのもので考えるという究極の矛盾があるためにこのような問題が起こるのです。壊れたパソコンで壊れたパソコンの故障個所を探すみたいであり、根源的に矛盾があるのです。

 このように心療内科ではそもそも病識を得ることが難しい傾向にあるため、病名や診断名、疾病の経過、治療法の再検討などの共有が診療する上で一層重要になると考えられます。