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感情理解における言葉の重要性について
2023年11月21日
以下、心理士鈴木のまとめた文章です。治療の参考にして下さい。
心身相関という言葉があるように、心と体の状態は密接に関わっています。この繋がりについては、ぜひ当院のHPにある「内受容感覚」の記事をご参照ください。本記事では、この心身相関をベースに考えつつ、これを発展させて「感情粒度(かんじょうりゅうど)」という観点から、心を穏やかに保つ方法について考えたいと思います。
緊張すると心臓がドキドキする、嫌なことがあって何となく胃がむかむかする等、内受容感覚(心拍などの身体内部の感覚)が感情状態に大きく関わっていることが分かっています。では、この感情は私たちの生活の中でどう表現されているのでしょうか。その表現方法の一つに、「感情を言葉にして表す」ということが挙げられると思います。
「悲しい」「嬉しい」「腹立たしい」など、私たちは多くの言葉を使って、自分の中に生じた感情を他者に伝えたり、自分自身の中で眺めたりしています。カウンセリングでも、今困っていることや悩んでいることなど、心のうちに抱えているものを言葉にして見つめてみることが多いです。
感情は大まかに、ポジティブ・ネガティブなものに分けられますが、このポジティブ・ネガティブそれぞれの中にも、様々な感情があります。例えば、「悲しい」はネガティブな気持ちだと言えますが、その延長線上には「絶望」があり、反対により強度の低いものとして「嫌な気持ち」などがあるかもしれません。これは「ネガティブ」という感情の種類は同じですが、感情の大きさが異なります。
自分の感じている感情がポジティブか、ネガティブかという判断については、少なくとも同じ文化圏であれば個人差はそれほどありません。ただ、感情の大きさ(強弱)を区別する能力の程度には、個人差があると言われています。このように、生じた感情を細やかに認識することやその程度を「感情粒度」と呼びます。感情粒度が高いということは、感情をより細やかに感じられていることを表します。この感情粒度が高いと、精神的健康を保つことにもつながると言われています。

この感情粒度の高さには、感情の元である内受容感覚を知覚する能力も関係していると言われていますが、語彙としてその感情の概念を獲得しているかどうかが大きく影響していると考えられています。感情以外で考えてみると、例えば「木漏れ日」という言葉があります。葉っぱから漏れ出ている光のことを指しますが、この言葉は日本語特有の言葉(概念)で、外国語だと一言では言い表すことが出来ません。そのため、「木漏れ日」という言葉を知らない人は、木漏れ日を目で見て知覚することはできますが、その概念を持ち合わせていないため、「木漏れ日」には気づくことができません。感情も同様に、それを言い表す言葉を知っていてはじめて認識することができます。

上記のことから、感情粒度を高めて生活していくためには、特に感情を表す語彙を増やすことが大切だと言えます。単語を調べる中で、新たな感情語との出会いとともに、自分の中の新たな感情を発見できるかもしれません。おすすめは、外国語を調べてみることです。ドイツ語では「Fremdschämen」(他人の不幸や恥ずかしい行為や失敗する姿に同情する気持ち)、「Futterneid」(食事をしているとき他の人が食べているものがうらやましくて仕方がない気持ち)のように日本語ではなかなか一言では表せない、けれども感覚的に理解することのできる感情語があります。
特に高校生では、受験勉強の一環として英語の勉強をしていることも多いと思います。受験のためだけでなく、自分の考えや感情の幅を広げ、それまでとは違った世界の見方をすることにもつながると思うと、一層英語学習のやる気も出てくるかもしれません。