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診療内容に関する読み物
心身の養生について
2021年2月5日
現在通院中の方で症状が慢性化して寛解に至らない方、薬の反応が悪い方、再発を繰り返す方などがおり悩ましいことが増えております。
また怒りのコントロールができない、イライラする、相手が許せないなども精神の問題として扱われがちですが、単純に生活の乱れが関係することも多いと考えられます。
適応障害の休職中などに生活リズム表(診療案内の「不適応・ストレス」の項目にあり)やグラフ化体重日記などを最近つけて頂くことが多いのですが、睡眠リズムの乱れ、食生活の偏り、運動不足などが心身の不調の原因ではないかと思われる例が多数認められます。
以下に患者さん自身でやって頂きたい心身の養生について、チェック項目を列挙致します。自身の生活を振り返ってチェックしてみて下さい。
心身の養生について
・清潔な習慣
□ 睡眠部屋の掃除をすること(ハウスダストなどを除去)
□ 毎日お風呂に入ること
・良質な睡眠
□ 入眠時間と起床時間を一定にすること(入眠薬を同じ時間に内服)
□ 昼寝・夕寝は厳禁(昼寝は15分以下なら可)
□ 入眠1時間前にはスマホを使用中止すること
□ 土日祝日でもリズムを変えないこと(まとめ寝は禁止)
・バランスのよい食事
□ 絶対正しいという食事内容はないため、様々な食材を万遍なく食べること
□ 最低30回噛んで飲み込むこと(意外と難しい)
□ BMI>25 空腹になるまで食べない(時間で食べない)、空腹時間を長めにとり空腹に慣れること
□ BMI<18 空腹にならなくても時間で食べること
□ 入眠2時間前から水以外は口に入れないこと
□ 炭水化物でもお菓子類(砂糖)は控え目にすること
□ 腸活をすること(腸内細菌製剤・発酵食品・食物繊維・オリゴ糖)
・適度な運動
□ ウォーキング1日5000歩(スマホで計測)
□ 適度なストレッチ:ヨガ(YoutubeのB-life)、ラジオ体操
・嗜好品の制限
□ 禁煙
□ 節酒(多くても1日アルコール1単位以下×週4日以下)
□ カフェイン、エナジードリンクをとりすぎないこと
休職と復職について
2021年2月1日
適応障害でも症状の重い方や職場環境の問題が大きい場合休職に至ることが多いです。ここでは休職から復職に至る過程について説明致します。
①精神症状や職場環境から休職が必要となった場合、多くの会社では「診断書」の作成が求められます。当院では必要時即日診断書(税込み3300円)を作成させて頂いております。ケースバイケースですが適応障害の場合は「1か月弱の自宅安静」の指示をすることが多いです。
②休職中は1~2週間に1回の通院になります。給与については有給休暇が残っている場合は有給の消化で、有給に残がない場合は病気休暇という形になることが多いです。病気休暇では、傷病手当が支給される場合が多いです(就職してからの期間など制限あるので注意)。
傷病手当金の支給には下記のような診断書が必要になりますので、通院時に持参ください(作成費用は3割負担で300円程度です)。
③精神症状が十分に回復したと判断された場合、今度は復職へ向けての準備となります。多くの方は復職に至りますが、症状回復したにもかかわらず退職に至る方も多いです。職場環境の調整が困難な場合や人間関係が破綻している場合、復職リハビリなどの制度がそもそも職場にない場合などのケースで散見されます。復職に際して、休職状態からいきなり通常の出勤状態に戻ることは難しいと思います。一定期間の心身のリハビリが必要になります。当院では下記の内容のプリント及び生活リズム表(記録表)をお渡しして、復職可能かどうかの判断をしております。
④復職可能であれば、復職可能の診断書を作成致します。会社によって復職時は診断書が必要ない場合もありますので、人事課または上司に必要の有無をお尋ね下さい。
⑤復職後については月1~2回の通院になり、問題なく出勤できていれば終診となります。
スムーズな復職のために
<復職に向けてのチェックリスト>
不安感や抑うつが回復し、意欲が少しずつでてくると、職場復帰を考え始めると思います。休職中の方の多くは、ほとんどの時間を自宅で過ごされるため、通勤していた時に比較して活動量が大きく低下しております。スムーズな復職のためには、休職中でも出勤を意識したリハビリが必要になります。
まずはゆっくりと休養し、生活リズムを十分に整えて下さい。別にお渡しする「生活リズム表」の作成も併せて行ってください。
具体的に取り組んでおきたい事項について下記のチェックリストに挙げていきます。これらの事項が無理なくできるか確認されてから、復職可能の診断をしたいと考えております。
また復帰リハビリテーションという制度のある会社も多いので、職場の上司・人事課・産業医の方と相談し可能であればその制度も是非ご利用下さい。
【就業を意識した生活リズムを整える】
□通勤時間に合わせた時間帯に起床・就寝ができますか?
□日中、昼寝をせずに起きていられますか?
□ウォーキングなど適度な運動ができますか?(1日5000歩程度)
□身だしなみと整えて外出ができますか?
□日中、図書館などの公共の場で過ごすことができますか?
□通勤の練習は可能ですか?実際に会社に時間通り行けますか?
□業務に関連した内容の新聞記事、雑誌、書籍、Webサイトなど集中して読めますか?
【復職に当たっての心構え】
□職場復帰をしたい、仕事をしたいと自然に思えますか?
□休職に至った原因・背景について自分なりに分析はできていますか?自分なりの対処はできますか?
□再発予防について考えていますか?(物事のとらえ方を見直す、相談を早めにするなど)
当院での精神療法の特徴②~病名・治療法の共有と病識について
2020年8月30日
開院して数か月になりますが、ひとつ興味深かったのが自身の病気を知らないまま通院を続けている方が多いことです。「よくわからないけど薬をもらっている」「何となく通院しているけど治らない」のような感じです。一般的な内科疾患の診療ではあまりみられない現象かと思います。全部とはいいませんが、内科疾患では高血圧、糖尿病、脂質異常症など病名をほとんどの患者様は知っており、病気の治療方法・経過なども大まかに把握していることが多いです。
心療内科クリニックでは患者さんに診断名は伝えない、あるいは共有しないといったことが度々あります。他院に通院していた方に「前の病院ではどのように診断されていましたか?」ときいても「さあ~?」という方も多いです。実際伝えられたとしてもうまく共有できていない場合もあります。病名を伝えないことでのメリットも確かにありますが、当院では可能な限り伝えること・共有することとしております。診断がよくわからない場合は「分からない」とも話します。病名を共有するメリットとしては、病気としてターゲットが分かりやすく目にみえてくるため、対処しやすいことがあります。どんな治療もそうですが、こちらが一方的に薬を出したり指導したりしても病気特に精神疾患自体はよくならないことが多く、共同作業にした方がうまく行くことが多いです。患者さんの生活習慣が大事になる糖尿病などと同じですね。病名や治療方法を共有するとネット社会なので皆様ネットで検索して色々と調べてきます。ネット情報には様々なものがあり玉石混交となっておりますが、それはそれでいいかなとも思います。ある意見を絶対視することが一番好ましくなく、当院での治療方針を含めて様々な意見から自分で治療方針を取捨選択していくことが大切だと考えます。
また心療内科でよく使用することばに「病識」というものがあります。要は自分がどんな病気にかかっていてどんな治療をしているかちゃんと理解している、認識していることです。心療内科ではそもそもこの病識を得ることが難しい傾向にあります。脳という病気の場所そのもので考えるので自分が病気であると理解するのは難しいからです。認知症の方が自分で認知症だとわからないといった例や、うつの人がうつ状態なのに「まだまだ自分は大丈夫」だと考える例などがあります。足が捻挫すると腫れたり痛かったりするので確かに病気だとわかりますね。しかし脳の場合は故障した脳そのもので考えるという究極の矛盾があるためにこのような問題が起こるのです。壊れたパソコンで壊れたパソコンの故障個所を探すみたいであり、根源的に矛盾があるのです。
このように心療内科ではそもそも病識を得ることが難しい傾向にあるため、病名や診断名、疾病の経過、治療法の再検討などの共有が診療する上で一層重要になると考えられます。