お知らせ
不安・うつ・躁鬱・不眠・不適応に関すること
会社の産業医との関わり方について
2022年12月12日
働いている皆様方の職場の職員数が50人以上の場合、「産業医」という医師免許をもった先生が常勤または非常勤で会社に勤務しております。「産業医」についてあまり知識のない方も多いので、今回は「産業医」の利用の仕方や注意点について述べたいと思います。産業医の役割は多岐にわたるのですが、ここではメンタルクリニックと関係する業務について焦点をあてていきます。
職場での人間関係、長時間労働、業務内容などのトラブルなどを契機にうつ状態になり、メンタルクリニックに通院されている方が多いと思います。当院でも、労働環境への不適応から精神のバランスを崩して受診される方が初診の半数弱を占めます。病名としては適応障害が一番多いのですが、治療として一番効果的なのは一時的に休職をすることです。ただ安易に休職することが難しい職場も多いです。真面目な性格から休職することで逆に気をつかって心身のバランスを崩すケースもあります。休職が困難な場合には、薬物治療をしつつ業務量の低減や異動など今後の働き方を職場の人事課や上司と相談していく流れになります。
適応障害で休職すると、うつに関連する症状は速やかに改善することが多いです(早いと数日~1週間)。精神症状はこのように比較的簡単に改善するのですが、問題は職場復帰後の環境調整です。同様の業務内容・人間関係では再発必至であるため何らかの介入が必要になります。
この復職の際に産業医を利用することが多いです。基本的に会社側から産業医面談を受けるように指示されます。産業医の役割としては、主治医からの診断書を基に、皆様と面談し復職後の勤務時間、場所、内容などを人事課や上司などの関係者と相談して調整することです。具体的には職場の関係者に向けて意見書を作成することになります。会社には法律上定められた安全配慮義務という「社員の心身の健康に配慮した職場環境の改善」をする義務があるため、意見書の内容を無下にはできないのです。もちろん最終的に配置転換などの決定は会社が行うことになるので、意見書の内容に従わないこともあります。
医師の中で「産業医」は比較的珍しい存在です。医大を卒業後または研修後にすぐに産業医になる医師はほとんどおりません(北九州の産業医大という産業医育成を目的に設立された医科大学を卒業された方はすぐに産業医になる方もおられます)。ほとんどの産業医は内科や外科などの医師が、専門とは別に産業医講習を受けて認定産業医という資格を取得して産業医になるのです。資格を取得するのは比較的楽なのですが、その後の業務となると話は別です。
昨今はサービス業が産業の主体となっており、メンタルヘルス関係の相談が業務の主体となっている産業医が多いと思われます。内科や外科の専門の医師では、専門外のメンタルヘルス関係の対応は不得手であることも多く、クリニックで診断書を作成してもうまく内容が伝わらないこともあります。本来産業医の業務である復職後の業務内容の調整などを主治医に丸投げしてくるケースもありますが、上記のような理由から致し方ない面もあります。もちろんメンタル系の専門外の医師でも優秀な方も多く、きちんと対応して頂けるケースも多いです。
また本来産業医は会社側と労働者の間に立つ中立的な立場で意見を述べるのですが、会社側から給与をいただいているので、やや会社側に立場が偏りがちです。私自身も産業医業務を非常勤で数社担当しておりますが、会社と労働者で意見が異なる場合はやや会社側にスタンスを置くことが多いです。
日本の会社システムの中では、健康上の問題があった場合の休職・復職の際に産業医と関わることがありますが、産業医にも不得手な分野があることや、中立よりは会社側の立場に立ちがちであることも考慮に入れていただいて面談に望まれるとよいと思います。
不安症について追加
2022年1月31日
不安症について一部加筆した部分についてまとめます。
神経症という言葉は最近あまり使用されなくなりましたが、不安症(不安障害)とは過剰な不安や恐怖によって苦しみ生活に支障をきたすようになった状態のことです。全般性不安障害、広場恐怖症、社会不安障害(社交不安症)、特異的恐怖症(先端恐怖症、閉鎖恐怖症、嘔吐恐怖症)、パニック障害、強迫性障害など様々な疾患を含みます。この中で強迫性障害はやや重い病気なので不安障害には含めないこともあります。
治療としては、SSRIというkey drugによる薬物療法が基本になりますが、心理カウンセリングや認知行動療法、TFT(思考場療法)、生活習慣や食事内容の見直しなども必要になります。当院では的確な診断はもちろんのことですが、不安・恐怖を克服して社会生活をスムーズに送れるように手助けをしていきたいと考えております。過去のトラウマが発症に関与する場合もあるため、BCT(ボディコネクトセラピー)などのトラウマ処理の手法も併用することがあります。
治療の中で特に重要なのが、不安症のためにひきこもりになったりドロップアウトをしないこと!!です。不安を抱えながらでも外へ向けて行動していく、活躍していく姿勢が非常に重要なことです。不安症のために自宅に引きこもっていると、「今後自分はどうなってしまうのか」といった将来不安が2次的に生まれ、「自分なんかどうせだめだ」といった自己肯定感の低下が続くことになり治療の妨げになるからです。特にパニック障害では「また同じような症状がでたら怖い」といった予期不安で引きこもりになりやすいので注意が必要です。治療では薬物療法・認知行動療法・TFTなどの手法でこころを守りながら病気に立ち向かっていく患者さんをサポートするというが基本であり、患者さん自身の協力も必要不可欠となります。行動で結果をだすことで自己肯定感が高まり、2次的な不安も低減され薬物療法から脱するという流れが治療の大きな流れになります。
不眠症とアルコール
2021年7月9日
最近、様々な理由(生活習慣、仕事のstress)で不眠になっている方が多くおられます。世の中にはその不眠に対してアルコールの力を借りている方が非常に多くおられます。
先日もアルコール飲酒後に車を運転して小学生の登校班に突っ込んでしまうといった大変痛ましい事故がございました。
当院では集団精神療法は行っておらずアルコール依存症の治療自体は行っておりませんが、睡眠薬代わりに飲酒している方については是非とも対応していきたいと考えております。
特に当院は立地上、横浜市の野毛地区にあり周囲は飲食・飲み屋街であり、飲食関係の自営業者が沢山おられます。飲み屋では特に目の前にお酒があるためつい気軽に「酒のんで寝る」といった習慣が身についている方が多いと思われます。
私自身も不眠がありますのでよく理解できますが、不眠というは非常にきつい症状であり様々な精神疾患やアルコール依存・乱用の入り口になるものです。
当院の予約はWeb、電話で2週間後の枠から対応しておりますが、「不眠のみ」の方については基本早めのご予約で対応させて頂きます。 診療時間内に電話でご相談下さい。
よろしくお願い申し上げます。